長谷川静 座談会「堀道政の検証」での発言

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長谷川静、座談会「堀道政の検証」での発言

 

 

はじめに

 

AWNメンバーの長谷川 静さんが、2001年3月27日に行われた座談会「二期目の折り返しに来た堀道政─過去六年を振り返り、今後の道政を展望する」(社団法人北海道地方自治研究所主催)に出席しました。これはそのときの内容をまとめた「北海道自治研究」387号(2001.4)から、長谷川さんの発言部分を抜粋したものです。 この座談会の出席者は、長谷川さんのほか川村喜芳(北海道町村会 前常務理事)、中川有三(グリーンプラネット)、信田邦雄(北海道農民連盟・北見地区農民連盟 委員長)の3氏。司会は十亀昭雄氏(北海道地方自治研究所 理事長)でした。

 

 

I 過去6年の総括的評価 

 

 

<道外市民運動経験者の道の印象>

 

長谷川

 

私が神奈川県とアメリカでの生活を経て、今暮している苫小牧市に来たのは約三年前です。私の神奈川県での市民運動経験は、当時、長洲一二知事が教育論議を巻き起こし、その時に、市民による教育運動に関わったことが始まりです。また、逗子市に在住していたこともあり、全国的なニュースにもなつた池子弾薬庫跡地への米軍住宅建設反対運動に関わりました。これは大きな市民運動となり、「政治への市民参加」とか、「市民が自治する」という言葉を創出するような運動へと展開しました。しかしこれは最終的には、知事が国の傘下に下り、住民を裏切ったような形になり、住民の政治に対する失望の中で長洲県政も終わったと言えます。

 

私の北海道の第一印象は、自分自身実際に住んでいたアメリカの印象によく以ているというものでした。私がたまたまアメリカで住んでいた所が非常にプレーンな農業地帯だつたので、北海道にそれとよく以た大規模な農業が営まれていることを知り、驚かされたのです。アメリカの持つ、堀道政の言葉を借りれば、「自主・自律」の精神に惚れ込んでいた私にとつては、北海道の持つ印象は非常に新鮮で、自分にフィットする土地だと思いました。 私の道内での活動の一つの転機になったのは、道が行った「男女共同参画リーダー養成事業」(補助事業として3回の海外研修を行ったもの)で、その最後である99年の開催時に、私もドイツ、フランスへ視察・研修に行き、それが縁で2年前から「男女共同参画審議会」の委員として働いています。現在は女性運動や環境間題などに興味を持って、地域で活動しています。

 

 

<相乗りが招いた堀道政の迷走体質>

 

長谷川

 

道のみならず一般に都道府県行政は、「中二階」と言われるように、国と市町村の間に挟まれて、見えにくいと言われています。それでも最近の道外の情勢を見ると、長野県では田中康夫氏、千葉県では堂本あき子氏と、無党派候補が知事になる傾向が出ています。これらの動きは、冒頭で十亀さんが「現代は若者が夢やロマンを持てない時代だ」と言っていましたが、恐らくそういったフラストレーションがエネルギーになり、自分たちの知事は自分たちで決める、という住民意識を育て、無党派知事誕生へと繁がっているのではないかと思います。これは政党の駆け引きで政治が動くことや、住民が自分たちのことを自分たちで決められないことに対しての憤りの現れではないでしょうか。このように道外では、自分たちの選んだ知事に自分たちが結んだ選挙公約を実現させる、という住民と知事との太い繋がりが求められている気運を最近感じています。

 

これに反して、堀知事の二期目は、いわゆる相乗りでスタートしましたが、これは知事として政策を実現するというよりは、むしろ政権の維持・獲得という観点からの選択だつたように思われます。知事の出馬表明で、「政策を実現するために、多くの人たちの理解や支持をとりたいから…」という弁明がありましたが、私たち道民にとつては、知事の言う多くの人たちとはつまり、政党、組織された団体のことを指し、道民個々人のことではありません。その結果現在も堀道政は、複数政党に対して何れにも良い顔をしなければならない中で、主体性が無く、ふらふらしている有様です。政策間に整合性がなく、道民としては釈然としないことが多々あります。これは正に相乗りの欠点が露呈した結果だと私は思います。

 

 

<(苫東ITER誘致に関連して)エネルギー開発は堺境保全の観点で>

 

長谷川

 

そうした迷走体質の象徴としては、最近のエネルギー開発問題が挙げられます。堀知事は、2期日の基本政策に「地域の活性化と住民の安全確保」や、「脱原発の視点に立ち、省エネルギーを促進し、地域の特性を活かした風力、天然ガスなどの多様なエネルギーの研究・開発に努める」といった内容を盛り込む一方で、現実にはそれらの基本政策とは明らかに矛盾する泊原発増設や幌延深地層研究所の受け入れも進めてきました。とりわけ幌延をめぐっては、昨年10月16日に道議会で「道内への高レベル放射性廃棄物の持ち込みは受け入れがたいと宣言する条例」、いわゆる「核抜き条例」(都道府県レベルでは初)が制定され、続いて11月16日にも核燃料サイクル開発機構(JNC)と道・幌延町との間に「核抜き条例」を踏まえた協定が結ばれたとは言え、それにしてもどうして放射性廃棄物の実験室が核抜きで成立しうるのですか。いくら条例や協定で「核は持ち込ませない」と言われても、個人的にはどうしても腑に落ちないし、地域住民の合意形成についても疑問が湧いてきます。

 

そんな中で私の住む苫小牧市は、苫東地区の広大な空き地にITER(国際熱核融合実験炉)誘致の計画が進められています。この誘致の中心は「北海道ITER誘致期成会」(96年6月18日設立)ですが、実はその会長が堀知事なのです。苫東地区は広大な用地で、水資源も豊富、千歳市に近く利便性もあるので、積極的な誘致の要因が揃っています。こうした事情が住民に危機感を呼び、最近ではようやく苫小牧市でも市民団体や自然保護団体が中心になって議会陳情や学習会などを行い、反対運動も盛んになってきています。

 

昨年12月9~10日に北海道新聞(情報研究所・調査研究部)の調査グループがITER誘致に関する住民世論調査を実施しましたが、その結果(『北海道自治研究』三八五号掲載)の数字を見ると、「ITERを知らない」という人がまだ8割ほどもいる一方で、「反対する」が81.9%という結果も出ています。しかしこれでもまかり間違えば今年の夏頃までに国内設置の誘致場所が、今候補地として挙がつている青森県六ヶ所村、茨城県那珂町、苫小牧市の何れかに決まってしまう可能性があるので、非常に不安です。

 

私たち苫小牧市民としては、ITERで使われるトリチウムという核燃料や放射性廃棄物のことを考えると、むしろ私たち自身の生命の安全確保に不安を覚えます。また、泊、幌延と合わせて考えれば、それらを容易に受け入れていこうとする堀知事の姿勢に対して、北海道の核基地化、放射性廃棄物の最終処理場化への危惧を強く持たざるを得ません。堀知事は一方では誘致賛成の政党に首根っこを押さえられているので、たとえ道民が誘致反対の意思を持っていても、何も言わなければ誘致賛成が住民合意だと決めつけてしまい、泊、幌延に続き、ITER誘致も実現してしまうのではないかと不安です。

 

私は99年に道の補助事業の研修でドイツを訪れた際に、バイエルン州の緑の党の本部を訪ねましたが、その時に党の代表の女性から、「日本はまだ原発を造っているのか」と言われました。彼女らにしてみれば、先進諸国が次々と脱原発を進めている昨今の情勢下では、日本の原発推進は時代錯誤ですし、放射性廃棄物の処理問題もヨーロッパへの被害も含めて大きな不安をもたらすものです。私たちはこの時、環境間題、とくにゴミやダイオキシンの話を訊こうと思っていたのですが、彼らの主眼点はもはやそこにはなく、エネルギー問題にあつたということです。彼らは遠い日本のことまでも憂慮していました.私は核の問題が世界的に深刻な問題だという事実を日本国内に広く伝えていかなければと気持ちを新たにしました。

 

北海道の未来にとってこんなに重要な課題がある以上、やはり私も道民の一人として責任ある発言をしていこうとその時に決心しました。この問題は、知事の政党への遠慮とか思惑、あるいは目先の利益で決められるべきものではありません。そういうことをすると時代の不幸ともなりかねないと思います。

 

堀知事の発言の中には「道民合意」という言葉が出て来ます。道民合意と言うなら、道民に軸足を置いて、重要な課題については住民投票などを通して、住民自身の意見が政策に反映される必要があります。知事には今後、然るべき手続で道民合意をとりつけた上で政策を実現していくようなリーダーシップを発揮してもらいたいのです。

 

II 個別的政策課題とその評価

 

 

 

<男女共同参画社会の形成推進をめぐる国内外の動き>

 

司会

 

中川さん、川村さん、信田さんのお話は何れも、道庁には旧来型の中央依存体質が依然として根強くこびりついており、北海道におけるそうした伝統的体質と在来型発想が分権型社会の創造的確立を妨げているとする点では共通していたかと思います。そんな問題提起も受けつつ、続いて長谷川さんからお話し下さい。

 

長谷川

 

私は女性政策の観点からお話しさせていただきたいと思います。歴史を振り返ると、堀道政がスタートした95年というのは、女性問題の分野で言えば、北京で「第4回世界女性会議」が開健された年でもあります。その時、「北京宣言」とともに、362項目にも及ぶ「行動綱領」が出され、これに基づいて世界中で女性政策や具体的な取り組みが進みました。昨年6月にはニューヨークで、2000年国連特別総会「21世紀に向けた男女平等、開発および平和」が開かれ、世界中の政府の代表者が集まって、北京会議以後の取り組みに見直しが図られ、そこで「政治宣言」や「特別総会成果文書」が採択されました。これらの成果を受けて、現在世界中で男女共同・平等社会実現への取り組みが始まっています。

 

日本政府は99年6月に、2000年の国連特別総会に間に合わせるような形で、「男女共同参画社会基本法」という法律を通し、昨年の暮れにはその実行基本計画も作成されています。これに呼応して北海道でも、従前から「男女共同参画プラン」についてはローリングをかけながら実践してきましたが、現在基本法制定を受けての条例の策定が進められている状況です(「北海道男女平等推進条例」は、この座談会の5日後、2001年4月1日から施行された)。

 

 

<女性政策の評価の三ポイント>

 

「北海道男女平等推進条例」制定までの経緯とその評価

 

長谷川

 

女性政策に関する一般的な評価基準として、

私は次の三つの点からアプローチしたいと思います。

 

 

 

1 女性政策に関する決まりや条例を持っているかどうか。

及び、その決まりや条例のクオリティ

2 女性政策の推進拠点・母体の規模やその機能のしかた

3 女性政策を担う担当部局の行政組織内での位置付け

 

 

 

1の観点から道政を検証すると、道には「北海道男女平等推進条例」があります。こ

の条例は2年間策定作業を続け、この度、議会で承認・成立ということになりました。私自身は「北海道男女共同参画懇話会」の審議員の一人です。この中には条例制定部会があり、そこで条例策定の準備をしてきました。昨年の5月から6月にかけて、道民公聴会ということで、道内3カ所で条例の内容が公開されました。本来ならば、今は支庁が14あるのですから、最低でも各支庁ごとに開催するべきだと思うのですが、何れにせよそういった取り組みは為されています。また、女性団体の意向調査が実施され、道民の意見がフイードバックされて検討が加えられたということは評価されるべきだと思います。 実はこの道民公聴会や道民意見の中では、条例の名称問題が大きくクローズアップされました。なぜなら、国の「男女共同参画社会基本法」の名称が、法律を議会に通すための譲歩の産物だったという経緯を受けて、条例レベルで名称内に「平等」を含めるかどうかが論議の的になったからです。結果的に、まだまだ現実には男女平等が達成されていないという見識に立ち、男女平等を盛り込むことになり、「東京都男女平等参画基本条例」(2000年4月1日施行)、「埼玉県男女共同参画推進条例」(2000年4月1日施行)、「三重県男女共同参画推進条例」(2001年1月1日施行)の制定などに続き、北海道では「北海道男女平等推進条例」に名杯が決定される運びとなりました。そういう意味では、行政主導ではなくて、道民の意見が名称の中に生きたということは、道民の意見が名称の中に生きたということは、私は、それに関わった一人として喜ばしいことだったと思います。

 

1の視点による堀道政の総合的な評価としては、まだ条例の段階ですから、これをさらに基本計画化、プラン作成へ持っていくだけでなく、より具体化して市町村へ下ろすという作業も今後は必要ですので、ここで性急な断定はするべきではありませんが、とりあえずここまでの段階では一定の評価はできるかと思います。

 

 

活動拠点の評価

 

長谷川

 

2の女性プランの活動拠点の規模と機能のしかたについてですが、道には女性プラン推進の中心として「北海道立女性プラザ」(91年11月開館)があります。これは「財団法人北海道女性協会」という団体が道から管理を受託され、道の複合施設内で管理されています。

 

しかし規模としては一フロアを占めている程度で、北海道の広域なエリアにわたる女性活動の拠点としては、規模的には小さいと言わざるを得ません。スタッフについても、常任理事が1名、正規職員4名、臨時・嘱託職員各1名という状況では、東京都、神奈川県、三重県などの同様の機関と比べると、比較の対象にもならないと思いました。

 

以前、私が活動拠点としていた神奈川県の例を紹介すると、江ノ島に「神奈川県立かながわ女性センター」という機関があり、ここはホール、研修室、相談室、宿泊施設、レストラン、体育館といった充実した施設を保有しています。それ以外にも同県は横浜市に同程度の規模の施設を2カ所持っていて、国内研修はもとより海外から招いた女性団体との交流事業を行うなど、様々なドラスティックな女性活動の拠点となっています。

 

私が言いたいのは、ネットワークの機能なども当然大事ですが、統括領域が広域にわたる北海道だからこそ、宿泊施設を備えたようなセンターが必要ではないかということです。道の女性政策の拠点としては現状ではあまりにも規模が小さすぎるのではないでしょうか。

 

女性政策担当部に総合調整機能を

 

長谷川

 

3の女性行政の位置付けについてですが、現時点(2001年3月)の道庁の行政機構では、女性政策の担当である「女性室」(2001年4月1日より「男女平等参画推進室」に改杯された)は環境生活部の中に位置付けられています。

私がドイツのフランクフルトで見た例を紹介すると、ここでは女性政策を全行政領域に及ぶ性格のものとしており、それ故、女性政策担当部は独立して、全行政部に対して調整がつけられるようなポジションに置かなければならないと考えられています。

このドイツの事例から逆照射するとよくわかるように、道の女性行政の現状では、女性問題そのものが依然として福祉や保護の範疇に区分されているのです。しかし理念が転換してきているわけですから、ここは女性の自立支援とか、男女共同参画の理念に合うような発想を持ってもらうことが必要だと思います。

 

昨年7月に道議会で小原葉子氏(2001年3月8日逝去)が、その質問の中で、「女性政策を担う担当部局のポジションがどこにあるかということは、北海道の女性たちが突きつけてきた長年の課題」と発言しています。これを彼女の遺言とすると大袈裟かもしれませんが、私はやはり今後は女性室が総合調整機能や、できれば監督権限を持てるようなセクションに変わらなければならないと思うし、そうしなければ女性行政は進展しないと考えます。

 

女性行政における堀知事の評価

 

長谷川

 

男女共同参画の推進に対する堀知事の姿勢についてですが、知事自身には積極的な姿勢が見受けられません。知事自身がこの間題を認識しているのかどうかは非常に疑わしく思われます。例えば「平成13年第一回北海道議会定例会」の「知事道政執行方針」の内容を見ても、「男女共同参画社会の実現に向けて、権利や利益を守るための仕組みの整備などを進めるとともに、・・・」と一行にもなっていないような扱われ方です。そういうことも非常に不満ですし、庁内での女性の登用も非常に立ち遅れていると思います。また、女性団体に対する視線の冷ややかさも感じます。

 

「北海道男女平等推進条例」の中には知事の責務も多数盛り込まれています。今日はそれらについて具体的には挙げませんが、是非とも実行に移していただきたいと思っています。

 

 

III 今後の道政に対する具体的提言

 

 

<行政と地域住民の協働の堆進>

 

十亀

 

続きまして長谷川さん、今後の道政に対する提案、 対案など を

よろしくお願いします。

 

長谷川

 

私自身の経験から、今後の道政に対する具体的な提言をお話ししたいと思います。

苫小牧市では行政と市民との「協働」作業として環境問題に関する画期的な取り組みをしており、私自身もこの作業に参加しています。これは行政と30人の市民委員とで「環境基本計画」を作る作業で、作成過程で自分自身非常に学習になります。全般に今まで一般市民が行政の人間と本気で関わる機会は少なかつたと言えますが、これから市民がレベルアップするためにも、例えばこうした試みは今後も不可欠になるかと思います。

 

しかしそういう協働作業を進めるにしても、担い手となる自立的な市民がどこにでもいるわけではないのです。道政の方では、支庁に最低でも一つの拠点作りをしてもらう必要があると思います。 例えば、市民活動支援センターを支庁ごとに一つずつ設置する、というような具体策を出して実践することです。堀知事は、今年2月15~16日に行われた東胆振対象の市町村訪問「ふれあいトーク」の場では、「行政サービスは与えるものではなくて、協働することが大事だ」と発言し、先程も引用した「道政執行方針演説」でも、「地域に密着した多様な市民活動が一層活発となり、新たな発展の段階を迎えることができるよう、NPOなどが交流・連携し、情報交換を行うための全道的なネットワークの拠点づくりを進めてまいります。」と述べていることですし、曖昧に「ネットワークを結ぶ」とか、「拠点を作る」と言うだけでなくて、はっき りとした形で施策を推進してもらいたいと思います。

 

<市民活動援助施設には明確な目的意織と適正な人材配置を>

 

長谷川

 

私が北海道に来て非常に気になつているのは、行政が市民活動を支援するにしても、そのための施設は作っても肝心の中身が伴っていないということです。ハード面は揃っていても、ソフト面の充実化及び適正化が遅れているのです。

 

例えば私の住む苫小牧市の状況を見ても、市民交流センター、女性センターなど、ハード面ではほとんど必要なインフラは整っています。しかし、どの施設でも同じようなことをしていて、独自性が乏しく、その施設では何をするべきかというソフト面が追いついていないような気がします。私が望むのは、各施設にプロフェッショナルを置くことと、施設職員に研修や研鑚の機会を十分に設けることです。やはりそうした施設を、情報交換の場、NPOの法人取得の支援所、地域のネットワークの拠点と位置付けるならば、それに応えられるだけのプロフェッショナルな人材を置いてほしいのです。また、例えば既に各支庁には「男女共同参画推進委員」が一人ずつ配置されています。とはいえ、設置されたこと自体は評価できるのですが、待遇としてはパートか嘱託職員で雇われている状況です。今後こうしたポストは必ず重要になつてくるので、その職員については、正職員として雇用し、十分な研修の機会を与えるなどして、配置するだけで満足せず、質の向上も目指していただきたいと思います。

 

<道副知事に女性の登用を望む>

 

長谷川

 

昨年、サハリンで北海道・ロシア極東地域の代表者会議「極東会議2000年」(8月30日)があり、堀知事以下160名の訪問団がユジノサハリンスク市を訪れまして、私もその一員として参加しました。この会義の枠内で州議会では「国際女性フォーラム」が開かれ、五年ほど前に創立された「ロシア女性同盟サハリン州支部」の代表の女性たちと会談、交流をしました。この女性団体は、現在7000人くらいのメンバーがいるそうです.私が実際に話したのは、トップのサハリン州議会第一副議長リュボフ・シュービナ氏以下、支部長、図書館長、州政府の担当官、大学教授の方などで、全員が女性でした。

 

その会談時にシュービナ第一副議長から聞いた話ですが、ロシア女性同盟は四年前にサハリン州の知事選を支えて闘って、その時に「副知事に女性を置く」という公約を立てたそうです。そして今それは実現しています。同時に立てた母親や子供の抱える諸問題解決についての公約も実現しているそうです。また、「ロシアの女性はどんなに暮らしが苦しくても、国の将来を考える力を持っている」という印象的な言葉を聴き、まだまだ日本サイド、北海道サイドの女性にはエンパワーメントが足りないということも痛感させられました。

 

実はこの時、是非北海道でも女性の副知事を誕生させましょう、という話が出ました。一方、道では今年3月をもって真田俊一副知事が勇退するということで、後任として総合企画部長の磯田憲一氏が議会で承認されましたが、この副知事人事と前後して、いくつかの女性団体が共同で、副知事に女性の登用を要望している、とする要望書を堀知事の方に提出しています。私自身も「アウン(Active Women’s Network:AWN)」を代表して届けて参りました。

 

日本全国を見渡せば、現在、女性知事は3名、女性副知事は7名います。リタイアされた方を含めると、のべ9名の女性が副知事職を経験しており、そのうちの2名(太田房江大阪府知事、塩谷義子熊本県知事)が知事になっいます。北海道でもまず、堀知事の在職中に女性副知事を誕生させて、将来的にはそこから女性道知事が誕生してほしいものだと私は思っています。

 

<女性の積極的な社会参画が秘める可能性>

 

長谷川

 

道はもっと市民参加型の政治を積極的に進めなければいけません。それは政策を立てた者に迎合していくのではなく、市民サイドが政策を立てることです。その方策としては、例えばそれを実現してくれる政治的リーダーを、候補の推薦の段階から作っていくような、そういう政策先行型選挙のようなものができたらと思います。

特に女性の政策決定の場への参画は日本は世界的に非常に後れています。道議会でも女性の進出が後れています。これに対して私たちは、投票行動や住民運動の中からでも女性候補を創出していくような運動を、学習やエンパワーメントを通じて実賎していければと思っています。

 

十亀

 

国内外を比べるとよくわかるように、日本でも女性パワーをもっと政治・行政の分野で活かしていく必要があるということですね。やはり具体的に参加して初めて関心が出て来る場合もあるので、言葉だけでは不十分だということになるでしょうか。

 

信田

 

まずは女性の持つ力を信じて、実際に行動してもらうことです.私たち農業関係でも、以前「婦人部」と言っていたのを、それが差別用語だということで、「女性部」に変えました。女性が積極的にまちづくりに参加している所では効果がすぐに出ています。

 

中川

 

農家の女性に給料をきちんと払えば良いのです。この構造を変えればすぐに農村の状

況は変わります。

 

信田

 

今は法人化や税申告などで農家の女性にも月給を払うようになってきており、賃金を自分のものにしている女性も増えてきています。自立は始まっています。

 

十亀

 

身近な所から自立は既に始まつているといぅことですね。今後もさらにそれを各分野で粘り強く促進していければ良いわけです。

 

長谷川

 

なぜ私がそういうことを力強く言えるかと言えば、道が補助事業として海外リーダー研修を実施し、色々な体験をさせてもらつたからです。私自身、その研修の成果は非常に大きなものです。私たちのグループAWNは、3回実施された道の海外研修に参加した人たちが中心になつて作った組織で、インターネットなどを用いて情報交換しながら、全道に散らばつて活動しています。ですから、こうした事業を今後も続けていけば、全道各地に女性リーダーが増えて、女性の社会参画の一つの柱となつていくのではないかと思います。

 

十亀

 

こうした具体的な提言をいただくと、ますます北海道の将来の希望が膨らんでくる気がします。

Ⅳ 最後に

 

十亀

 

最後に一言ずつ、これだけは言いたいということがあれば、述べていただきたいと思います。

 

信田

 

要は分権と自治、「自主・自律」です。「じりつ」は律する方で良いと思います。自ら律すれば、自ら立つてもいけるでしよう。道民は自らの住む市町村に対して自ら提案し参加し協力すること。今はこういう意織を育てるために何を為すべきかを考える時期だと思います。こういうことで私の堀道政六年の検証に対する意見とさせていた だきたいと思います。

 

川村

 

知事は議会よりもまず道民にしっかりと顔を向けて、何を考えているのか、明確なメッセージを伝えてほしいと思います。また、議会との対立を恐れてはなりません。そもそも政党の相乗りなどは考えるべきではないと思います。

日本の政治は現在、どうしようもない閉塞状況に置かれていますが、ひょつとしたら地方から政治が変っていくかもしれないという期待があります。三重県の北川正恭知事、長野県の田中康夫知事、高知県の橋本大二郎知事、宮城県の浅野史郎知事、あるいは東京都の石原慎太郎知事が頑張っていますが、そういう自治体の一つに北海道も入ってほしい、そぅいう道庁に是非なってほしいというのが私の願いです。

 

中川

 

先程、長谷川さんから女性の参加という意見が出されましたが同感です.男性はとかく「優勝劣敗の法則」に従いがちです。好戦的で市場経済優先で環境軽視です。二一世紀は市場経済と環境の時代ですから、女性はどちらかというと「棲みわけの法則」に合うので環境型です。歴史では、種は多くなる方向に動き、生物は棲み分けの中で共存共栄してきたわけですから、これからは市場経済的な価値観が全てであるというような優勝劣 敗の法則は少し遠慮して、棲み分け的・よもやま的な話の中から新しい、活き活きとした感性が生まれてくるということを、勇気をもって形にしていくことが私は大事だと思います。

 

もう一つは、「公助」と「共助」という考え方です。社会的なフレームとして、市場経済と環境以外のことを、国家や行政が国民サービスとして行っていかなければ、これからの少子高齢化時代はうまく機能していかないでしょう。しかし、今まではその部分に大きな予算も脚光も注がれてこなかつたわけですから、人材も少ないし、お金も用意されていません。そういう中でこの問題を少しでも早く軌道に乗せていくためには、「公助」だけでは力不足です.住民が積極的に公共空間に参加してくる姿勢が必要です。ですから行政と住 民は今後お互いに「公の限界」と「民の力」を明らかにしていく必要があると思います。

 

この問題を長期的に、総合的にどのようにして成果を作っていくのか、政治家や行政が明確なヴィジョンを示せないと、これが住民の自立心の芽を摘み、結果的に地域や住民の自立を大きく妨げて行く要因になると思うのです。東京がこう言ったとか、予算が云々といったことだけでは解決しません。このような考え方はもう止めましょう。道民とともに歩むしかないのです。

 

長谷川

 

「ポジティブ・アクション(積極的改善措置)」という言葉が今あります。これは、色々な面で立ち遅れている女性を積極的に登用し、支援するという意味で、その政策が道の方でも立てられています。私は、まず、堀知事に庁内から、女性幹部を意志決定の場に参加させることで、この「ポジティブ・アクション」を実践していただきたいのです。

 

昨年三重県津市で「日本女性会議2000津」(11月10日~12日)がありまして、北川知事が挨拶の席に立ちました。知事は原稿なしで、本当に楽しげに、私たち日本全国から集まった女性たちを激励してくれました。この話を三重県立女性センター長にしたところ、彼は、「知事はいつも僕たちに元気や夢を与えてくれます。行政サイドにも県民にも与えてくれます」と言っていました。 堀知事も道民と親しく接して、たまには難しい話はぬきにして、その代わり心のこもった姿勢や眼差しや声を私たちに届けてほしいと思います。

 

十亀

 

21世紀の道政を展望するにあたり、道政を当面する多くの内外の困難も北海道らしい創意工夫で乗り越え、知事・道庁、道議会、道民が共々に、頭と心と身体の汗を流し合う、文字通りよってたかっての協働作業に基づく共同芸術作品に是非仕上げたいもの、ということで今日の長時間の議論を終わらせていただきたいと思います。皆さん、どうもありがとうございました。